2020年から高齢者雇用安定法により、高齢者も働きやすい環境を整える様に政府は企業に呼び掛け、60歳を過ぎても継続して働きやすくなりました。
でも。実際は60歳を境に本人の意思とは別に給料が減額される人も少なくありません。
中には、同じ仕事をしていても時間当たりの賃金が減ったり、働く時間や日数を減らされ、結果的には給料が減ってしまうケースもあります。
ここでは、60歳を過ぎ、継続して働いているけど賃金が減った、また、一旦は退職して再就職したけど以前より収入が減ってしまった、という人に読んで頂きたいです。
高齢者雇用給付は2通りある
60歳以降も同じ会社に継続して働いていて給料が下がってしまた。
また、再就職したけど以前より、収入が減ってしまった場合に条件が揃えば受け取れる給付金を高年齢雇用継続給付といいます。
この、高年齢雇用継続給付には、高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金の2種類の給付金があります。
早くいうと、60歳後も会社に継続していて働いていて賃金が下がった時受け取れるのが高年齢雇用継続基本給付金といい、それ対して60歳以降一度会社を退職し、失業保険を受け取り、再就職した際に支給残日数が残っていると受け取れるのが高年齢再就職給付金といいます。
これから、それぞれ説明します。
高年齢雇用継続基本給付
高年齢雇用継続基本給付とは、60歳を機にポストを外されたり、再雇用という形で雇用形態が変わったりする際に、賃金が下げられるケースがよくあります。
60歳~65歳未満の人の賃金が60歳時点の賃金と比べて75%未満に低下した状態で働いている場合に支給されるのが高年齢雇用継続基本給付金です。
同じ会社に引き続き雇用される場合だけでなく、退職後にすぐ、別会社に就職した場合も、基本手当(失業保険)を受け取っていなければ支給の対象となります。
今まで勤めていた会社を一旦、退職して再雇用される場合もあります。
たとえば、今までの労をねぎらう為、退職後に旅行へ行ったり、しばらく休暇を取ったりする人もいます。その場合、退職から再就職の間に基本手当、すなわち、失業保険を受け取っていなければこの高年齢雇用継続基本給付に値します。
もし、基本手当を受け取っていても支給残日数が100日以上あれば対象となりますが、それ以下は後で説明する高年齢再就職給付金に変わります。
支給残日数とは失業保険が受け取れる所定給付日数は、前職の退職理由や、年齢、雇用保険加入期間によって90日から330日まで規定されていますが、定年退職の場合は、20年以上被保険者であっても150日です。
たとえば、指定日数が150日で、60日間失業保険が支給されたなら、支給残日数は110日となります。
仮に、60歳到達時の賃金月額が30万円である場合の支給額の例ですが、60歳を境に20万円まで賃金が下がった場合は低下率が66.67%で61%を超えていますので、1ヶ月の支給額16.340円です。
計算方法は賃金が下がった低下率により支給率が決まっていて、下がった賃金額に支給率をかけると給付金の支給額が分かります。
支給率は「高年齢雇用継続給付支給率・支給額早見表」で確認してください。
また、支給には限度額が決められているので注意が必要です。
令和3年8月現在では、支給限度額が360,584円以上の人は高年齢雇用継 続給付は支給されません。
さらに、支給対象月に支払いを受けた賃金額と高年齢雇用継続給付として算定された額の合計が支給限 度額を超えるときは、360,584円−(支給対象月に支払われた賃金額)が支給額となります。
主に以下の3つの条件が満たすことが必要です。
1.60歳以上65歳未満の失業保険に加入者であること
2.被保険者であった期間が通算して5年以上あること
3.60歳以降の賃金が60歳時の賃金の75%未満に低下したこと
高年齢再就職給付金
高年齢雇用継続基本給付は基本手当(失業保険)を受給していない人を対象にしているのに対し、高年齢再就職給付金は、雇用保険の失業手当を受給していた人が、60歳以降に再就職して、再就職後の各月に支払われる賃金と前職時の賃金とを比較して、再就職後の各月に支払われる賃金が75%未満に低下した場合に支給される給付金です。
どちらも給付金の算定方法や申請手続きは同じですが、支給要件や支給期間の規定が異なります。
高年齢雇用継続基本給付は、被保険者が60歳に到達した月から65歳に達する月まで可能ですが、高年齢再就職給付金は失業保険の支給残日数によって以下のように変わります。
・残日数が200日以上の場合:2年間
・残日数が100日~199日の場合:1年間
ですね!
最長で1年間なのでこれだけを見れば継続雇用のほうが良いかもしれません。
以下の要件を満たした方が対象となります。
・再就職手当の支給を受けていないこと。
・1年を超えて雇用され安定した職業に就いたこと。
などがあります。
そうです!
この、高年齢再就職給付金は再就職手当との関係があるので気をつけたい部分です。
高年齢再就職給付と再就職手当はどちらがお得?
この、高年齢再就職給付金は、再就職手当と併給できませんので慎重に選択しなければいけません。
どちらかを選ぶ場合、どちらが得になるかです。
それは再就職した時の基本手当の指定残日数がどれだけ残っているかによって変わってきます。
再就職手当の計算は「再就職手当の受給額=基本手当日額 ×支給残日数 × 給付率」です。
基本手当日額の計算は、
①賃金日額=退職前6ヶ月の給与総額÷180(6ヶ月×30日)を算出します。
②基本手当日額=賃金日額×45~80%(年齢や賃金日額によって異なる)を算出します。
例えば、60歳時の賃金が30万だったら、賃金日額は10.000で、(4,640円以上10,570円以下で 80%~45%)になり基本手当日額は、 3,712円~4,756円といったところです。
いえいえ、それに給付率もかけなければいけないんだ、
給付率は、
・支給算日数が残り3分の1以上なら支給残額の60%
・支給算日数が残り3分の2以上なら70%
となり、3分の2以上残して再就職した場合には、残った基本手当の70%が支給されます。できるだけ早く再就職したほうが、再就職手当の方がお得かもしれません。
再就職手当を自動で計算するサイトがあるので良かったら調べてみてください。
人それぞれ条件が違うので良く調べなければいけないね、再就職手当は一度に支払われることも忘れてはいけないよ、
高年齢雇用継続給付も受けないほうが良い場合も
60歳を過ぎると特別支給の老齢厚生年金の受給ができますが、高年齢雇用継続給付を受けると老齢厚生年金が減額されることがあります。
賃金の低下率が61%以下で支給額が15%のときは、年金額の6%が支給停止となります。
さらに60歳以降も厚生年金に加入していると、在職老齢年金制度の仕組みにより、支給停止も加わるので、二重に年金が減額されてしまいます。
場合によっては高年齢雇用継続給付を受けない方が結果的に得となるケースもあります。
まとめ
いかがでしたか、
現在において60歳を境に賃金が下がるのが一般的な考えです。それを少しでも補うのが高齢者雇用給付という制度です。
これには二通りの給付があり、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」があることが分かりました。
また、これには「再就職手当」や「厚生年金」との兼ね合いも忘れてはいけないところです。
それには、しっかりとしたシミュレーションをしてみることが必要です。